君の「普通」が羨ましい。少年少女の心の叫びを描く青春小説。
第2回ハナショウブ小説賞 テーマ部門大賞受賞作!

『ハローハロー』
著者:九津十八(ここのつ・とおよう)
定価:1,870円(本体1,700円+税)
発売日:2025年1月29日(水)
装丁:宮川和夫(宮川和夫事務所)
装画 :金子幸代
四六版ソフトカバー
ISBN:978-4-434-34937-9
発行元:opsol株式会社
発売元:星雲社
★電子版同日発売

 

あらすじ

吃音に悩む中学生・加瀬真中は、いじめが原因で不登校となったまま、中学三年生になった。そんな真中のもとに、車椅子に乗ったクラスメイト・明石京子が訪れる。
ピエロのように作り笑顔を浮かべて不都合なことをやり過ごしてきた真中と、自身のことを歩けないカカシだと皮肉る京子。互いを見下し合う関係でいることで、心穏やかな学校生活を送らないかと京子に提案され、奇妙な関係を築いていく二人だが……。
友達でも恋人でもないふたりの関係を、人はなんと呼ぶのだろう。

著者:九津十八(X:@kokonotsu18
1987年生まれ。兵庫県加古川市出身。
2024年に『ハローハロー』が第2回ハナショウブ小説賞テーマ部門大賞を受賞、同作にて小説家デビュー。野球観戦とゲーム配信視聴が趣味。

絶賛の声多数!

宗岡敦子様(紀伊國屋書店福岡本店 )
年を重ねていくと、青春小説が、自身から遠い世界に感じる事があるのですが、本作は、全く違いました。
大人になっても忘れたくない、大切な心が込められていました。
吃音のハンディキャップを持つ少年と、事故で車椅子を余儀なくされた少女。
複雑な言葉で結ばれた2人の関係性が、どんどん変化していく様子に、目が離せません。

お互いが傷つき、時にぶつかり合いながらも、明日への一歩を踏み出す気持ちを諦めない。
その姿に、何度も心を揺さぶられる、熱い涙が滲みました。
そして、優しさについての、多くの問いがあふれました。

理不尽な日々に屈せず、新しい自分を探し続けていくような、勇気の絆が輝く物語。
ラストのシーンでは、爽快な気持ちが込み上げ、最高!!と叫びたくなりました。
胸に希望の明かりが灯り、かけがえのないパワーをいただける、本当に素晴らしい作品。

「ハローハロー」の煌めきが、さらに多くの方に届いてほしいです!

 

原田里子様(マルサン書店サントムーン店)
胸の内にはたくさんの思いと言葉があり、行き場のない感情に溢れていて。
笑顔と取り澄ました顔の裏に隠されたふたりの慟哭が、卒業までのページに聞こえてきます。
だからこそ卒業式でのふたりの叫びがより深く胸に刺さる。
涙を見せ合いありがとうと言い合えるふたりが踏み出す未来が、少しでも希望にあふれるものでありますように願ってやみません。

 

山下真央様(くまざわ書店調布店)
些細なことでも揶揄われてしまうような、多感な時期に吃音、車椅子に乗っている、はわかりやすく標的にされてしまいますね…。
いじめ、ということをしなくても手助けもせず見てるだけの傍観者。
本人はいじめていないし…と思っていても、いじめられた側からしたらいじめてきた人と何も変わらないんだなとつくづく思わせられました。
最後の卒業式で、特にひどくいじめてきた人の名前をいうのではなく、明石さんは「いじめっ子だらけ」と言ったのは傍観者も含めているからなのかなと思いました。

最初はお互いを見下しあう関係だったかもしれないけれど、ひとりぼっちがふたりぼっちになるのは確かに大きな救いだなと。
いろんな事情から、苦しんでいる中学生、高校生は多いと思います。そんな彼らがこの本を通じてひとりぼっちではなく、ふたりぼっちになれたらいいなと思います。友達ではなく、挨拶をするだけでも自分の存在を認めてくれている、そんな気持ちになるはずです。若い学生の方に読んでほしい作品だと思いました。

 

齊藤一弥様(紀伊國屋書店仙台店)
プロローグの時点でグッと心をわし掴みにされました。「吃音」と「下半身不随」というハンディを持つ二人の高校生が日々の暮らしで受ける差別、イジメ、そして憐れみの視線。それらに憤り、絶望し、苦しみ、泣き続ける1つひとつの出来事に心が痛みました。
加瀬くんがイジメられる原因となった自己紹介。
最初の頃の主犯格である岡本くんは元々は吃音をイジったら面白くなるという軽い思いから始めた事だと思います。それが次第にエスカレートしてクラス全体でのイジメへと発展していったのは、現時世界でも往々にしてあり得る展開で、そのリアルさが辛かったです。そもそも最初のイジりの時点で加瀬くんはとても傷付いていました。前日に何度も練習するぐらい悩んでいる問題でもありました。この悪意の無い、笑い優先の行動というのが世の中のイジメの発端でもあるような気がします。
明石さんもまた、(弱り果てていた時の自身の言動が原因とはいえ)酷い扱いを受けている事に最初驚きました。加瀬くんの家を最初に訪れた場面ではまさかふたり共イジメられてるなんて予想もできませんでした。排泄事情とか、オシャレしたいという気持ちだとか、普段車椅子ユーザーを見掛けただけでは思い浮かばない日常生活の切実な悩みを垣間見ることになり、これらもまた心に痛いほど響きました。
この作品で一番、ダントツで不快な存在が生徒指導の先生です。最低最悪の人間でなぜこんな男が教員でいるのか理解に苦しみます。本当に嫌な奴でした。加瀬くんがキレた時は拍手喝采の気持ちでした!
どんな結末、卒業式を迎えるのかハラハラしていましたが、最高に恰好イイ前代未聞の卒業式でしたね! それでも自分がこの作品の登場人物だったら間違いなく傍観者であり、加瀬くんに「拍手するな!」と、怒鳴られていた側の人間だと思うので、この作品で明石さん、加瀬くんが訴えていたことは心に刻んでおこうと思います。

障がいを持つ人との接し方は非常にデリケートな問題で、当事者によってどういう風に接してほしいかはそれぞれ違うと思います。
それでも絶対に共通するのは相手の尊厳を傷付けるような事はしてはいけないということです。
「思いやりの気持ち」と言葉にすれば簡単だけれど、例えば序盤で加瀬くんが良かれと思って無言で車椅子を押し明石さんに怒られた場面があります。あの一連の出来事に象徴されるように善意であれ、相手の立場にたった考え方が大切なのだと改めて考えされられました。

おそらくこの作品はまだまだ知れ渡っていません。それでも書店員としてこの作品と出会い、素晴らしさを知った以上、自分の店舗をはじめ、他の書店にまで広めて多くの人に読んでもらうことが書店員としての使命だと感じています。
素晴らしい作品は書店員魂に火を付けてくれます。
『ハローハロー』もまた、私に火を付けてくれました!
売るぞーー!!!!!!!!
ハロハローー!!!!

 

山田恵理子様(うさぎや矢板店)
こんな世界の中で、2人の心の叫びが胸の中に刺さり、響き、目頭とともに熱くなる。
読んだらカバーをはずして見てほしい。
2人が出会ってくれてありがとう。
この本に出会えたこともありがとう。
あきらめないでと心に灯る小説です!

 

藤井亜希様(紀伊國屋書店相模女子大学ブックセンター)
友達でもなく、仲間でもなく、傷を舐め合うわけでもない、見下し合う関係。
一見歪なようだけど、でも生きる力になるのなら、それはもう同志と言っても良いのではないかと思いました。
いや、「ハロハロ」か。名前なんて何でもいい。前に進む原動力になる存在がいるだけで。それだけは本当に良かった。
「可哀想」と思うこと=見下している。
良かれと思ってする無知な行為が、ただの迷惑でしかないかもしれないこと。
人を傷つけた過去は、どうやっても消えることなんてない。
見て見ぬふりは同罪。
「死ぬ気でやれば何でもできる」なんて言葉はもう使えない。
“教えられる”“考えさせられる”ではなく、改めて“気づかされる”が一番ぴったりくる物語でした。
感動したと安易に言えないけれど、2人が今まで溜めに溜めたものを吐き出すシーンは、圧巻で、スッキリしました。

 

あおい様(レビュアー)
もし一人ぼっちだと感じていても、理解しようとしてくれる人がいたらこんなにも心強いのだと勇気をくれます。
吃音や車椅子であることに対して理解しようとしない教師に腹がたちますが、思わぬところで二人で声を上げる場面は最高です。
でも最高の感情は加瀬くんと明石さんの二人だけが味わって良い感情であるのだとも思います。そのくらい二人の姿が眩しく、そして心情が変化していく姿に心が突き動かされました。

困っている人に手を差し出すことが難しくても、その人を知ることで理解することは出来るのではないでしょうか。ただ寄り添うことの大切さをぜひ感じて欲しいです。
中高生にもぜひ読んでほしい物語です。

 

ぐっじょぶ様(レビュアー)
感動したとか泣いたとか必読とか、有り体の言葉 使うなよ。
わかった、気になんてなれない程の辛さなんだよ、今はない足が、痛むんだ。
ストレス?根性不足?何かのせいにするんじゃねーよ。何度も何度も練習したさ。でもカ行は言葉が詰まるんだ。

車椅子の女子と吃音の男子、中学生の物語です。
どうして歩けないの?なぜ治らないの?あいつら何やってんの?
その疑問のまま寝不足覚悟で一気読み。
後悔ゼロです。
よっしゃのガッツポーズ用意してください。

なにこれめっちゃいい話なんだけど←でしょでしょ?声、聞こえたよ。

 

朱音ゆうひ様(レビュアー)
現実を生きていると、耳障りのいい良い理想をよく聞きます。
困っている人を助けるとか優しくするとか、みんな仲良くとか、相手を思いやるとか。
そういう言葉を見ていると理想的な綺麗だったり優しかったりする人間社会のイメージが湧くけれど、一方で自殺とかいじめとかの話もいっぱい見かける。学校の生徒も先生も、決して善良で品性のいい人間ばかりではなくて、低俗だったりエゴエゴしかったり悪意でいっぱい。
そういう「あり得ないような酷さがあるのが現実だろ」っていうのを描いて突きつけてくる作品でした。

学校の生徒や先生は終始どうしようもない存在で、そこが本当に現実的で、世の中に「こういうのわかるよ」と言う元学生がいっぱいいるだろうな。

 

リジャードじゅんこ様(図書館関係者)
中学校でつまはじきにされているふたりが寄り添い静かな闘志とともに戦う姿に何度も何度も涙した。

真中と京子が卒業式でとった行動
クラスメイトや先生に投げた言葉
ふたりの行動にただただ拍手を送りたい。

 

K様(レビュアー)
気合、根性、そんなものじゃどうにもならないものと一生闘っていかないといけない人がいる。想像力をフルに働かせても足りないその状況を、全く想像出来ない奴等が先頭となって誘導していく恐ろしい世界をまざまざと見せつけられた。
反省や後悔をするのは、間違った側とは限らない。その状況を、状態を、改善したいと思っている側(被害者)から動かないといけない「優しくない世界」に憤りを感じながら、自分の人生の中に似たシーンはなかったか、と顧みては心が騒いだ。

想像力、想像力、想像力―――
何かを行動に移す前に、今一度しっかり想像力という思い遣りを発動させてみよう、と訓えてくれる作品。